あげものブルース、文化系男子必読のエモくて熱い漫画。

僕はこの漫画の虜になってしまいました。

このブログはいずれ僕の本棚、レコード棚、そして頭の中を文章で残していきたいと考えています。そんな風に始めたブログ。本棚の中で始めに紹介したいのがこのあげものブルースです。

目次

普通の男の30年間の歩み

とくに何も特筆すべき点のない男たち。
普通の家庭で、普通に学校に通い、普通に仕事をして、普通に毎日を過ごす、男たち。

皆あげものが好きです。

それは漫画の登場人物も、今これを読んでいる皆も多くが同じなのではないでしょう。

この漫画はそんなあげものが好きなだけの男たちの普通の日常が描かれます。

ジャンルとしてはグルメマンガとなるのですが、あげものを軸にして展開される、3人の男たちの30年間の群像劇となっています。

この漫画では、今まで僕が言葉にできなかったような、頭で絵に描くことができなかったような情景が描写されます。

あげものブルース

ゆるいタイトルに、ゆるいイラスト、ゆるいストーリー。

なのに、ぐっとくる熱い瞬間が確実にそこに存在します。

なんでもなく読み進めているとふと胸が締め付けられたり、ぞわっと鳥肌がたったり、なんともゆるい表紙の感じからは裏切られてしまう瞬間が幾度もあるのです。

これがとても心地がいい。この高低差こそが、この漫画が愛される理由ではないでしょうか。奥田民生も推薦しているようです。確かになんとなくゆるく、しかし確実に心の奥を刺激する奥田民生の世界観に近いかもしれない。

さあ、ここまで言われると読みたくなってきたでしょう?

「あげものブルース」と検索してこの記事にたどり着いたのなら相当な物好きです(笑)なぜって、たぶんみんな知らないと思います。この漫画のこと。

隠れた名作とはよく言いますが、なんかそんな言葉も「あげものブルース」の前では陳腐に感じてしまいます。

でも本当におすすめです。

あらすじ

からあげ
からあげ好きの男の話。お弁当の唐揚げが少ないことが気になる。

てんぷら
冴えない城マニアの男(浜田)が友達(徳永)に誘われ天ぷら屋に行く話。

とんかつ
城マニアの浜田が旅先でとんかつを食べる話。

かりんとう
父親を亡くした徳永がインドに行く話。

続てんぷら
徳永が30年ぶりに行きつけの天ぷら屋に訪れる話。

続とんかつ
浜田の30年後の話。

続からあげ
からあげ好きの男のその後の話。

あらすじというあらすじはこんな感じです。僕はその中でも3話目の「てんぷら」が好きです。

好きなところ

城が好きなだけの普通の大学生の浜田。その前にお金持ちでイケメンで人気者の徳永が現れ、徳永行きつけの天ぷら屋に二人で昼ごはんを食べることになります。

冴えない男にも分け隔てなく接してくれる徳永に浜田は良い気分になります。天ぷら屋は小汚いが、大層旨く、そして安い。徳永は女友達ともよく訪れるようで、自分の知らない普通の店でこんなに粋な青春が繰り広げられていたとは、と、心底関心しっぱなしです。

そして、今度城を一緒に見に行こう!と言いかけるのですが、結局誘うことはせず、二人はそれきり特に交流があるわけではなかったと描写され話は終わります。

めっちゃ細かいんですが、僕はこの話の浜田の心理描写がとても好きです。実際多くの人が浜田のような経験をしたことがあるのではないでしょうか?

あいつとは住む世界が違うと思いながら、いざ付き合ってみると意外といいやつじゃんとなったり。

ありふれた普通の大衆店が実は最高にうまいと言われた瞬間、それを知らなかった自分を少し恥ずかしく感じたり。

そんな小汚くて逆にイケてる店に女友達と当然のように通ってることを羨ましく感じたり。

もうちょっと踏み込んでみようかなと思いながらも、やっぱりいつもの自分が出てきてしまったり。

この漫画は、とくに重要なことがおきたりはしないのですが、(ちょっと衝撃なことはある)普通の男の、誰にも特筆されないようなそんな描写がとても心地よく、面白いのです。

あげものブルースと音楽

「あげものブルース」の「ブルース」の部分はとくに最初はなにも気にしていなかったのですが、この漫画は音楽について、特にビートルズの影響が色濃く見られます。

4話目の「かりんとう」は浜田を天ぷら屋に連れて行った徳永が大人になったあとのお話なのですが、ビートルズがホワイト・アルバムを作ったとされるインドのアシュラムに仕事で訪れます。

まあそこで徳永は大変な目にあうのですが、それは一旦置いといて。

音楽を敬愛する様子もとても好きでした。

そして、あげものブルースを読んでいて気づくのですが、話の終わりと次の話の始まりの継ぎ目があえてぼやけさせているというか、確実に違う話ではあるのですが、どこか背景はつながったまま話がシームレスに移行されるような構成になっています。

これはビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の曲の継ぎ目がないかんじに似ている気がすると思いました。

全然関係ないのかもしれないですが。

ぜひ読んでみて

とにかく、音楽とか、ゆるい漫画とかそういうのが好きな文化系男子は、あげものブルースを読んでみるといいです。

なんの教養にもならないかもしれないですが、僕はこの漫画を読み終わって、なにもない砂の中に輝く砂金を見つけたような感覚を覚えました。

あと、このよくわからない漫画が本棚にあるってなんとなくかっこよくないですが?できれば平置きで置いときたいですね。さりげなくちょっと雑な感じで置いてあるほどかっこいい。

友達が家に来て、「この漫画なんなん?(笑)」と言ってきたら大成功です。よくぞ聞いてくれました。

しかし、その雰囲気はださないようにしたほうがいいですね。あくまでさりげなく。「意外と熱いから読んでみなよ」とだけ答えてあげましょう。

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